国内から出版されているのギターTAB譜を見慣れた人なら分かると思いますが、海外サイトや輸入版のギターTAB譜は見にくくて、弾き方がよく分からない場合があります。
実際に比較すると、日本式がいかに丁寧で親切な表記であるか分かると思います。
今回は両者のギター奏法のTAB譜表記や記号について、何が違うのかを分析していきます。
(※これから紹介するギターTAB譜の画像は全て私が作成したものになります)
フレット番号
欧米式のギターTAB譜の特徴としては、フレット番号に符尾が付いてません。
上記のTAB譜は五線譜が付いて、これでもまだマシな方ですが、大抵の場合は五線譜は無く、TAB譜だけの掲載が多い印象があります。
欧米式では、ごく稀にTAB譜の枠外に符尾が付くこともありますが、フレット番号の真上か真下にある方がベストでしょう。
一方で、日本式のTAB譜にはフレット番号に符尾が付いてます。この符尾があることで、4分音符なのか8分音符なのかが明確に分かります。
たったこれだけの事で、楽譜の印象が大きく変わり、とても見やすくなります。
それと、全音符や2分音符にTAB譜用の囲み があることも日本式の特徴でもあります。
チョーキング
- ギターベンド(1,2拍目)
ギタープレイの要でもあるチョーキング(ギターベンド)ですが、欧米式は通常の1音分上げるチョーキングを「full」、半音は「1/2」と表記します。
クォーター・チョーキングも「1/4」となるので、とても合理的な表記方法でしょう。
このカーブ矢印表記は海外では一般的で、有名なTAB譜作成ソフト「Guitar Pro」でも採用されています。
日本式では「C.」による表記なので、こちらの方が見慣れているはずです。
国内の楽譜出版社でカーブ矢印表記はお目にかかれないので、海外サイトのTAB譜を閲覧する際は心得ておきましょう。
- リリース・ベンド(3拍目)
欧米式のTAB譜に” r “と表記されたベンドした弦を下ろして元の音程に戻す奏法のことです。
初めて見た人は「何だコレ?」となりますが、日本式を見れば一目瞭然でしょう(苦笑)
要は、チョーキング・アップした状態からチョーク・ダウンするだけです。
欧米式のTAB譜では、3弦7フレットに押弦してチョーク・アップするのか勘違いしそうですが、実際には3弦5フレットをチョークアップしてからチョーク・ダウンします。
読譜に注意が必要な奏法のひとつです。そもそも、私たち日本人ギタリストは「リリース・ベンド」と呼びませんからね…
- ベンド・ハット(4拍目)
「ベンド・ハットって何ですか?」(笑)
チョーキングした後にダウンする事です。よくやるギタープレイのひとつでしょう。
欧米式では山みたいな線で表記されますが、ハンマリング・オン、プリング・オフで弾かないように注意が必要です。
クラシックギターのスラーと勘違いしそうですが、日本式を見れば、とてもシンプルであることが分かるでしょう。
意外にも欧米式のベンド・ハットの記号は、楽譜作成ソフト「Finale」「musescore」「Guitar Pro」にも採用されてるので、覚えておいて下さい。
アルペジオ
欧米式でアルペジオは「let ring」と表記されます。
日本では馴染みのない英語ですが「響かせたまま」という意味になります。
海外のギターTAB譜では、よく使われる記号で、ほんのちょっとした余韻だろうが度々表記され、頻繁に見る機会があると思います。
それだけギターの余韻を気にするプレイヤーが多いのでしょうね…
日本ではお馴染みの”Arpeggio”の略でもある「Arp.」の表記です。
ただ最近では、国内の楽譜でも表記されないことが多い気がします。
というのも、暗黙の了解で余韻を残すのが前提であり、普通に弾いてたら、響きを残したギタープレイになってしまうからです。
それでも、しっかりと表記されている楽譜は親切でしょう!
ミュート
欧米式ではミュートはパーム・ミュートを意味する「P.M.」と表記されます。
我々日本人ギタリストからすれば「”パーム・ミュート”って”ミュート”のこと?」となってしまいますが、その通りです(笑)
正確には、右手の手刀部分を弦に当てて弾くことですが、左手の指で弦に軽く触れることもミュートでもあるので、前者の意味であるパーム・ミュートの方が適切な表記であることが分かります。
国内でも個人制作された楽譜は「P.M.」と表記されることもあるので、注意しておきましょう!
日本式は”Mute”を意味する「M」表記でお馴染みですね!
国内の大手楽譜出版社は、この「M」表記を採用していますが、時折スタッカートと同じように記されることもあります。
今後も楽譜記号のスタンダードとなるでしょう。
ハーモニクス
- ナチュラル・ハーモニクス(1,2拍目)
左手の指でフレット・バーに軽く触れて、”ポーン”と撥弦する奏法。
欧米式では、フレット番号の上に小さい丸が表記される傾向があります。これは楽譜制作者によって表記に偏りはありますが、おそらく一般的だと思います。
一方で、日本式は”Harmonics”の略である「Harm」と表記され、なおかつ五線譜のオタマジャクシが菱形になり、フレット番号に菱形の囲みが付きます。
ハーモニクスに関して、日本式は手が込んでいて、作成する際は面倒ですが(笑)、これだけ差別化した表記であれば、一発でハーモニクスで弾くんだと分かります!
- ピッキング・ハーモニクス(3,4拍目)
ピッキング・ハーモニクスは「P.H」と表記され、主な違いは日本式では囲みがあるぐらいでしょう。
囲みがあるかで、プリング・オフとハンマリング・オンの間違いを防げると思います。
タッピング
欧米式では、タッピングは「T」と表記され、始まりの音から終わりの音までスラーが付けられます。
ハンマリング・オン、プリング・オフの表記もなく、簡素化されています。これはこれでアリでしょう。
しかし、「スライドを挟む場合はどうするんだ…?」と疑問に思いますが、こればかりはプレイヤーの判断に委ねられるでしょうか…
日本式では、タッピングするフレットに下矢印が付きます。
ただ、この表記は一般的ではなく、大手音楽出版社シンコーミュージックの楽譜では「右手で押さえる指+丸囲み」で表記されています。
この下矢印表記は押さえる指の指定がないので、ギタリストによって、タッピングは”人差し指派”と”中指派”に分かれますので、意外にも合理的な演奏記号でもあります。
まとめ
いかがでしたか?
その他にも演奏記号はありますが、大幅な違いはなかったので、いくつか省略しました。
楽譜はダウンロードが主流になった昨今、今後も海外サイトから購入する機会が訪れると思います。
同じギターという楽器でも、国や文化が違うだけで楽譜にも大きな影響を感じます。
奏法や演奏記号の違いに戸惑わずに、楽しいギターライフを送りたいですね!