ギター初心者にとってTAB譜にある指記号は、非常に分かりやすく、ありがたい存在だと思います。
これがあるからこそ、押さえるフレットの適切な運指が理解でき、ギターを続けられる理由のひとつに挙げてもいいぐらいでしょう。
ところが、中級者以上になるとTAB譜に記載された指番号や指記号は、場合によってはギタープレイの妨げになる可能性もあります。
というのも、ある程度のギター・テクニックが確立されると、指使いにも個性が生まれ、必ずしも記載された指記号通りが適切だとは限らないからです。
具体的に、どのようなフレーズが運指に影響を受け、混乱しやすいのかを例をあげて説明していきます。
パワー・コード
まずは、基本となる上記のパワー・コード(Root +5thで構成された和音)を見てみましょう。CとDのコードになります。
Ex-Aでは、Rootは左手人差し指で押さえて、5thは左手薬指で押さえます。2,4拍目のオクターブとなる8thの追加音では小指で押さえます。
いたって合理的な押弦方法で、四和音以上のコードがフレーズにあったとしても、左手の指が事前に準備できている状態になっているので、素早く押さえられると思います。
Ex-Bでは、代わりに5thを小指で押さえて、8thも小指でセーハして押さえます。
楽曲のテンポが速い場合は、こちらの方が都合が良く、ラクに弾けると思います。もしかしたら、無意識でこのように押さえるギタリストは多いのではないでしょうか。
結論から申しますと、どちらも正解です。
このように、左手の押弦する指はギタリストによって千差万別で、弾きやすい方法があったとしても、指記号が混乱を招いているのです!
ギター・リフ
上記は私が適当に作ったギター・リフです(笑)
ここで注目したいのが、Ex-Aは6弦を左手親指で押さえるロック・フォーム、Ex-Bは6弦を左手人差し指で押さえるクラシック・フォームになります。
両者の使い分けは中級者以上のギタリストであれば、自然にできると思います。
ところが、このようなギター・リフでは、演奏者がロック系統か、クラシック系統かのバック・グラウンドに関わらず、指記号が指定されています。
このような事例は、楽曲を実際にレコーディングしたギタリストの弾き方を想定して、指記号が記載されているでしょうが、弾きやすさは考慮していません。
ペンタトニック・フレーズ
上記はAmペンタトニック・スケールでよくある”ラン奏法”です。
チョーキングこそはないものの、無意識に弾こうとすると、大抵の場合はEx-Aの押さえ方になるではないでしょうか。
1,2弦15フレットを左手薬指で押さえることで、速弾きに対応できるフォームになり、多少のテンポが上がっても弾けるかと思います。
一方のEx-Bでは、1弦15フレットを左手小指、2弦15フレットを左手小指で押さえます。
この押さえ方は非常に合理的かと思いますが、最初の内は少し”慣れ”が必要かもしれません。
このような押さえ方にする理由としては、左手の薬指と小指を独立させ、左手を横移動することで、後続の複雑なフレーズに対応できるフォームだからでしょう。
タッピング・フレーズ
タッピング奏法は、人差し指派と中指派に分かれるのではないでしょうか。
このフレーズでは1小節目でAmコードの全音符を弾いてから、2小節目でタッピング・フレーズに移行します。
Ex-Aの右手人差し指では、2小節目に入る手前で、ピックを右手の拳の中に収めるか、ピックを口に咥えるかなどをして、タッピング・フレーズを弾き終わった後に、再度ピックを握る工程が必要です。
もちろんピックを捨てて、新しいピックに持ち替える方法もありますが、少し手間が入ります。
これらの工程をしてまで、人差し指でタッピングする理由は、圧倒的に音が安定するからです。
右手人差し指でのタッピングが苦手という方は、Ex-Bの右手中指でのタッピングが最適です。
こちらは弾いてる最中にピックを持ち替える必要がないので、そのまま右手をフレット・ボードに近づけれるので、演奏がモタつきにくいのが特長です。
ただ、右手人差し指よりも右手中指は押弦する力が弱まるのが短所です。
(ちなみに私は右手薬指でタッピングしています。理由は右手中指を痛めたため)
まとめ
今回はいくつかのフレーズをEx-AとEx-Bに分けましたが、先ほども申し上げたように、どちらで弾いても正解です。
指番号や指記号の表記はありがたいものの、「本当にこの指定通りに弾かないとダメ?」と勘違いするギタリストは多いと思います。
ロック/ポップス系の音楽は演奏の自由度が高いジャンルなので、ギターの弾き方にも制限があるわけではありません。
日本のギター教則本やスコアは、分かりやすくて親切なものが多いですが、いつの間にか「こう弾くべき」と思い込んでしまいます。
もし実際のフレーズと運指に違和感が生じても、自分なりの弾き方を追求してギターライフを楽しんでいきましょう!